1 甲の相続につきその法定相続人乙が承認または放棄をしないで死亡したいわゆる
再転相続において,乙の法定相続人丙は,乙の相続について放棄をしていない場
合は,甲の相続について放棄をすることができ,かつ,甲の相続について放棄をし
た後乙の相続について放棄をしても,丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の
相続についてした放棄の効力は,遡及的に無効にはならないと解すべきである。
(昭和63.6.21第三小法廷判決)
2 甲が死亡し,その法定相続である乙が甲の相続につき承認または放棄をしないで
死亡し,丙が乙の法定相続人となった場合を,「代襲相続」と区別して「再転相続」
と呼んでいる。
再転相続の場合は,代襲相続の場合と異なり,甲→乙という第一の相続と乙→丙と
いう第二の相続が存在し,丙は「甲の相続に対する乙の選択権」と「乙の相続に対
する丙固有の選択権」とをともに行使することができる。
3 丙が乙の相続を放棄して,もはや乙の権利義務をなんら承継しなくなった場合には,
丙は,右の放棄によって乙が有していた甲の相続についての承認又は放棄の選択権
を失うことになるのであるから,もはや甲の相続につき承認又は放棄をすることはでき
ないといわざるをえないが,丙が乙の相続につき放棄をしていないときは,甲の相続
につき放棄をすることができ,かつ,甲の相続につき放棄をしても,それによっては
乙の相続につき承認又は放棄をするのになんら障害にならず,また,その後に丙が
乙の相続につき放棄をしても,丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続に
つきした放棄の効力がさかのぼって無効になることはないものと解するのが相当で
ある。