投資信託受益権(MRF等)と個人向け国債の相続

H26・2・25第三小法廷判決 判タ1401号153頁

1(判旨)
(1)共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
(2)共同相続された個人向け国債は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。

2(1)これまで、共同相続された投資信託受益権が当然に分割されるか否かについて判示した最高裁判例はなかった。本判決は、MRFを含む投資信託受益権について、相続による当然分割を否定したものである。
(2)投資信託受益権は、法律上収益分配請求権と差異があるものとされていない委任会社に対する閲覧謄写請求権(性質上不可分)を含んでいる。そのため、投資信託受益権と金銭債権との類似性(経済的機能)はともかく、法律上、両者は性質を異にするといわざるを得ず、相続による当然分割において両者を同一に論ずることは難しいと考えられる。

3(1)これまで、共同相続された個人向け国債が当然に分割されるか否かについて判示した最高裁判例はなかった。本判決は、個人向け国債について相続による当然分割を否定したものである。
 (2)公簿による国債の発行は、消費貸借類似の一種の無名契約である。
消費貸借類似であるとすると、個人向け国債も金銭の給付を目的とする過分な権利であると考えられそうである。しかし、個人向け国債は、額面金額を最低単位として権利の帰属が定められることが予定されており、1単位未満の権利行使は許容されていない。

4.この点、最二小判平成22・10・8判タ1337・114は、一定期間分割払戻をしない条件で一定金額を預け入れる定額郵便貯金債権について、郵便貯金法が分割した権利行使を許容していないことなどを理由に、相続による当然分割を否定している。