特定不動産の共有持分の譲受けと共有解消手続

1.共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟である。(最判昭50.11.7)

2.「共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には共有としての性質を有すると解するのが相当。

3.共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産について同人の有する共有持分権を譲り受けた第三者は、適法にその権利を取得することができる。

4.共同相続人の一人が特定不動産について有する共同持分権を第三者に譲渡した場合、当該譲渡部分は遺産分割の対象から逸出するものと解すべきであるから、第三者がその譲り受けた持分権に基づいてする分割手続を遺産分割審判としなければならないものではない。

5.共同相続人に対しては全遺産を対象とし民法906条の基準に従いつつこれを全体として合目的的に分割すべきであって、その方法も多様であるのに対し、第三者に対しては当該不動産の物理的一部分を分与することを原則とすべきものである

6.第三者に対し右のような遺産分割審判手続上の地位を与えることは遺産分割の本旨にそわず、同審判手続を複雑にし、共同相続人側に手続上の負担をかけることになる。

7.第三者に対しても、その取得した権利とはなんら関係のない他の遺産を含めた分割手続の全てに関与したうえでなければ分割を受けることができないという著しい負担をかけることがありうる。

8.当該不動産のうち共同相続人の一人が第三者に譲渡した持分部分を除いた残余持分部分は、なお遺産分割の対象とされるべきものであり、第三者が右持分権に基づいて当該不動産につき提起した共有物分割訴訟は、ひっきょう、当該不動産を第三者に対する分与部分と持分譲渡人を除いた他の共同相続人に対する分与部分とに分割することを目的とする。

9.分割判決によって共同相続人に分与された部分は、なお共同相続人間の遺産分割の対象になるものと解すべきであるから、右分割判決が共同相続人の有する遺産分割上の権利を害することはないということができる。