2010-01-01から1年間の記事一覧

賃貸借と差押(物件明細書)

1 具体的な事例の判断においては、抵当権設定日、賃借権の締結日・対抗要件 具備日、差押登記日等、判断の基準となる年月日順に整理し、慎重に検討しな ければならない。 2(1) 平成15年改正前の民法395条が適用される賃借権 ① 平成16年3月31日までに締結さ…

強制競売手続停止の仮処分命令と不法行為(判タ1325-201)

1 原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合には、仮に特段の 事情のないかぎり債権者に過失があったものと推認するのが相当であると 判示している(最三小法昭43.12.24民集22巻13号3428頁、判タ230号173頁、 最二小判平2.1.22裁判集民159号121…

民事保全の担保の債権者の権利行使

1 債務者は、違法不当は保全命令の執行等による損害賠償請求権の担保 として供託された金銭又は有価証券について、他の債権者に先立ち弁済 を受ける権利を有する(法4Ⅱ、民訴77)。 2 旧民訴法下においては、担保権利者は、供託された金銭又は有価証券 の…

支払不能、支払停止

1 支払不能とは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち 弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない 状態」と定義(破産法第2条⑪) 2 履行期に債務を弁済する可能性が一般的・継続的に消滅したら、債権者 への比例平…

複数口債権と開始時現在額主義(判タ1323-128)

1 債務者の破産手続開始の決定後に、物上保証人が複数の被担保債権の うちの一部の債権につきその全額を弁済した場合には、複数の被担保債権 の全部が消滅していなくても、上記の弁済に係る当該債権については、 破産法104条5項により準用される同条2項にい…

充当指定権と破産(判タ1323-106)

1 H22.3.16最判の補足意見 〔内容〕充当指定の時期的制限とは別に、破産手続開始の決定後は 弁済充当に関する合意の効力を破産手続上主張することが できないことをいうものである。 2 判旨 本件各弁済を受けてから1年以上が経過した時期において初めて、…

付郵便送達

1 就業場所にあてては付郵便送達をすることはできない。2 就業場所は、そもそも二次的な送達場所であり、かつ、プライバシー 保護の観点から補充送達受領資格者には差置送達ができないとされる 場所であるので、同所に付郵便送達を認めることは相当ではな…

遺留分の基礎たる財産

1 特別受益としての贈与 特別受益としての贈与は、特段の事情のない限り、相続開始1年前 であるか否かを問わず、また、損害を加えることの認識の有無を問わず 、すべて加算される。 2 最三小判平成10年3月24日 民法903条1項の定めある相続人に対…

民事再生法上の共益債権を弁済により代位した者が再生手続によること

◇大阪高裁、平22.5.21判決(金法1899)1 民法501条の代位の趣旨について、「代位弁済者の債務者に対する 求償権を確保することを目的として、弁済によって消滅するはずの 原債権及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその 求償権を有する限度…

遺贈の種類

1 補充遺贈 例えば、被相続人Aが甲地をBに譲るが、Bが断ったときはCに譲る という趣旨の遺言など、受遺者Bが遺贈を放棄したら、その者に遺贈 する予定であった財産を別の者Cに遺贈するという内容の遺贈。 2 後継遺贈 例えば、被相続人Aが妻に全不動…

特別受益と学資

1 高等学校卒業後の学資 私立の医科大学の入学金のように特別に多額なものでない限り、子の資質・ 能力等に応じた親の子に対する扶養義務の履行に基づく支出とみることが できる。 2 子に対する扶養の範囲内とは言えないものの、相続人全員が大学教育を受…

破産管財人の保険契約の解除

◇保険法 第60条 ① 破産管財人がする解除は、保険者がその通知を受けた時から 1箇月を経過した日に、その効力を生ずる。 ② 保険金受取人 保険契約者を除き、保険契約者の同意を得て、前項の期間 が経過するまでの間に、当該通知の日に解除の効力が生じた …

共益債権の代位弁済と共益債権化

◇ 共益債権の保証人が、弁済により代位した債権の支払を請求したところ、 求償権が再生債権であることから、民事再生手続外でこれを行使し弁済 を求めることができるか否かが争われた事案(金法1897−26) 1 民法501条は、弁済による代位の効果とし…

遺産分割(不動産の現物分割)

1 取得条項 ● 申立人は、同目録記載1の土地及び同2の建物を取得する。 (1)相続開始後遺産である不動産の登記名義が被相続人のままである 場合には、遺産分割により当該不動産を取得した共同相続人は、不動産 登記法27条により、相続を原因として、直…

近親者の慰謝料

1 死亡慰謝料では、死者の慰謝料請求権を相続する構成をとっても、近親者固有 の慰謝料請求の構成をとっても、慰謝料の総額は変わらないとされるのに対し、 後遺障害慰謝料では、本人の慰謝料とは別途に、すなわち、慰謝料総額を増額 する形で近親者固有の…

保証人がいる場合の債権認否

1 破産手続開始決定前に保証債務を履行済みの場合の認否 ア.債権者は、保証人からの履行により減額された債権で破産手続 に参加する。 2 保証人の将来の求償権の認否 ア.保証人のみが届出をし、債権者が一般債権調査期日終了までに債権 届出をしなかった…

遺留分

1 判決要旨(判タ1317-124) 遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者が、民法1041条所定の 価額を弁償する旨の意思表示をしたが、遺留分権利者から目的物の現物返還 請求も価額弁償請求もされていない場合において、弁償すべき額の確定を 求める訴え…

システム開発契約の問題点(判タ1317-5)

1 当事者の一方と他方とがシステム開発という共通の目的に向けて協働する といういわば「共同型」の契約 2 当事者の一方が他方にシステム開発を注文あるいは委託(委任・準委任) をし、他方がこれを請け負い、あるいは、委託するといういわば「対向型」 …

陳述書(判タ1317-52)

1 陳述書の機能 ① 主尋問代替・補充機能 ② 事案提示機能 ③ 争点整理機能 ④ 証拠開示・反対尋問準備機能等 2 陳述書の内容のうち、周辺的な事情や形式的事情については、短時間の確認 的な尋問とどめるのが相当であるとしても、実質的争点事項にわたる部分…

共同相続人の一人が相続財産を占有する場合と明渡(諸問題388頁)

1 共有者は、持分に応じて共有物の全部を使用できる(民249)ので、 相続財産を占有する相続人(以下「占有相続人」という。)は、他の 相続人から明渡しの理由が共有持分である場合は明渡しを命じられる ことはない。 2 最高裁昭和41年5月19日判決 「右の…

1項2号の請求権と租税債権

1 破産手続開始の決定後に破産手続に関連して生じる租税債権であっ ても、かかる費用性が認められないものは2号に該当せず、劣後債権 となる。 2 財団所属財産の管理や換価から直接生ずる租税債権 財団所属財産に課される固定資産税、都市計画税、償却資…

財団債権と原状回復請求権(大阪地裁Q46)

1 破産手続開始後に賃借人の管財人が解除を選択する場合には、明渡し のための原状回復請求権を財団債権(破産法148条1項4号又は8号)になる と解する見解が多い。 2 原状回復請求権の原因となる毀損行為や設備設置行為などの発生時期が すべて手続開始の…

書面尋問とモデル書式(判タ1316-5)

1 交通事故−医師2 交通事故−目撃者3 受刑者−預金の不正払戻し まずは書面尋問を活用して、どの程度の記憶があるのか確認する意義があ る。書面尋問に適する類型の一つである。4 遺言無効確認−公証人5 マンション管理会社の担当者 質問内容の性質上、提…

減収がない場合における逸失利益(赤本2008-下巻-24頁)

1 減収の有無2 現在及び将来の昇進・昇給における不利益3 後遺障害の部位・内容・程度と被害者の業務の具体的内容との対応関係 からみて業務への支障4 従前の業務に支障が生じたため配置転換を余儀なくされたなどの事情5 勤務継続の不確実性に関する被…

調書判決

1 判決書原本に基づかない言渡し 2 制度趣旨 当事者間に実質的な争いがない事案においても、判決書原本の作成の要する とすれば、実質的な判断を伴わない判決書の作成という形式的事務のために、 原告の権利救済の迅速性が損なわれることになります。そこ…

存続期間の定めがある借家契約の終了と法定更新

1 存続期間を定めて建物賃貸借をした場合には、当事者が借家関係を更新 させずに終了させるためには、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に 相手方、すなわち賃貸人若しくは借家人に対して更新しない旨の通知又は 契約条件を変更しなければ更新しない旨…

民事再生と極度額の弁済

1 再生債務者の再生手続開始決定は当然には元金の確定事由となら ない(民法398条の20第1項4号)。 2 「仮払に関する定め」は、平等原則の見地から、極度額超過部分 につき、他の同種の再生債権に関する権利変更の一般的基準(法156 条)に従って権利変更…

最後配当に充てる財産の判明と配当表の更正

1 破産管財人が配当額の通知を発する前に、新たに最後配当に充てること ができる財産があるに至ったときは、破産管財人としては、遅滞なく、 配当表を更正する(法201条⑥)。 2 配当額の通知を発した後は、破産債権者が具体的な配当ないし配当金 (支払)…

付加金(判タ1315-28)

1 付加金の意義 付加金とは、使用者が労働者に労働基準法20条(解雇予告手当)、37条 割増賃金)等の規定に違反し、裁判所が労働者の請求により使用者に対し て支払を命じる本来支払うべき金額の未払金と同一額の金員をいう(労働 基準法114条) 2 法的性…

遺産分割協議と第二次納付義務(国税徴収法39条)

◇最高裁 平21.12.10第一小法廷判決(判タ1315-76)1 判決趣旨 ① 国税の滞納者を含む共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、滞納 者である相続人にその相続分に満たない財産を取得させ、他の相続人 にその相続分を超える財産を取得させるものであるときは…