◇最高裁 平21.12.10第一小法廷判決(判タ1315-76)
1 判決趣旨
① 国税の滞納者を含む共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、滞納
者である相続人にその相続分に満たない財産を取得させ、他の相続人
にその相続分を超える財産を取得させるものであるときは、国税徴収
法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たり得る。
② 滞納者に詐害の意思のあることは、国税徴収法39条所定の第二次納税
義務の成立要件ではない。
2 国税通則法42条によれば、国税の徴収に関しても、民法424条の詐害行為取消
権の規定が準用されており、国税の納税者がした財産の譲渡行為等が詐害行為
に該当するときは、徴収職員はその行為を訴訟によって取り消した上で当該
財産に対して滞納処分を執行することができる。
3 国税に関する詐害行為のすべてを訴訟をまって処理していたのでは、国税の
簡易迅速な確保を期することができない。そこで、納税者が無償又は著しい
低額で財産を処分し、そのため納税が満足にできないような資産状態に立ち
至った場合には、その受益者に対して直接第二次納税義務を負わせることに
より、実質的に詐害行為の取消しをしたのと同様の効果を得ようというのが
国税徴収法39条の立法趣旨である。
4 同条にいう「第三者に利益を与える処分」とは、滞納者の積極財産の減少
の結果、第三者に利益を与えることとなる処分をいうものと解され、国税の
徴収実務もそのような解釈の下に行われている。
5 本判決は、滞納者の詐害の意思が不要である理由として、国税徴収法39条
の規定上詐害の意思が要件とされていないことを挙げているが、同条の前身
である旧国税徴収法4条ノ7の規定が「財産ノ差押ヲ免ルル為」という主観的
要件を定めていたのを現行国税徴収法の立法の際に39条の規定から落とした
という経緯があることからしても、本判決の解釈には異論がないものと思わ
れる。