付加金(判タ1315-28)

1 付加金の意義
   付加金とは、使用者が労働者に労働基準法20条(解雇予告手当)、37条
  割増賃金)等の規定に違反し、裁判所が労働者の請求により使用者に対し
  て支払を命じる本来支払うべき金額の未払金と同一額の金員をいう(労働
  基準法114条)


2 法的性質
   実務上は、労働基準法により使用者に課された義務に違背したことに
  対する制裁として、裁判所により命じられることによって発生する義務
  であるという見解がほぼ定着している。


3 請求額
   本来支払われるべき解雇予告手当労働基準法20条)、割増賃金(同法
  37条)等と同額となる。
   2年の除斥期間


4 遅延損害金
   遅延損害金は、付加金の支払を命じる判決が確定した日の翌日から発生
  し、利率は民事法定利率による。


5 仮執行宣言
   付加金請求については、仮執行の宣言を付することはできない。


6 訴額への算入
   附帯請求として、訴額に算入しない取扱いをしている。


7 裁判所が支払を命じるべき額
   裁判所が支払を命ずることができる付加金の額(の上限)は、口頭弁論
  終結時における未払金額である。
   裁判所の裁量により、支払を命じないか又は一部減額して支払を命じる
  ことができるとする見解に立脚する裁判例が相当数存在する。


8 労働審判手続の申立てと付加金請求
   その性質上、労働審判の対象外であると解するのが相当である。
   除斥期間の進行の中断の効力は追加申立てをしたときにしか発生しない。
   東京地裁労働部では、労働審判手続の申立ての際に付加金支払請求の
  記載があったとしても、申立人に削除又は取下げを求めることはせず、
  労働審判をする場合に、付加金請求については「請求を棄却する」又は
  「請求を放棄する」という判断を示す取扱いをしている。