1 支払不能とは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち
弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない
状態」と定義(破産法第2条⑪)
2 履行期に債務を弁済する可能性が一般的・継続的に消滅したら、債権者
への比例平等弁済の原資を確保する必要性が現実化するので、債務者自身
による弁済や隠匿等の処分を防ぐために、財産の管理処分権を剥奪する
ことが必要となる。
3 債権者は、一方では自己の債権を実現するために個別の権利行使をする
ことができるのが平時の原則であるところ、債務者が一般的・継続的に
履行期に債務を弁済できなくなったら、「早い者勝ち」による債権者間の
不平等を防ぐために、個別の権利行使を禁止する必要がある。
4 「早い者勝ち」の個別行使で出遅れた債権者が平等弁済を求めうること
を正当化するのは、債務者が履行期にある債務を一般的・継続的に弁済
できないために現在の財産を比例平等的に分配する必要があるという事情
である。
5 偏頗行為否認において支払不能が基準時とされているのは、以上のよう
に支払不能が債権者平等を強制するという原則に基づくものである。
6 支払停止とは、支払不能の旨を外部に表示する債務者の行為をいう。
7 債務者が弁護士との間で債務整理のために破産手続開始の申立ての方針
を決めただけでは、支払停止とはいえない(最判昭60.2.14)