財団債権と原状回復請求権(大阪地裁Q46)

1 破産手続開始後に賃借人の管財人が解除を選択する場合には、明渡し
 のための原状回復請求権を財団債権(破産法148条1項4号又は8号)になる
 と解する見解が多い。


2 原状回復請求権の原因となる毀損行為や設備設置行為などの発生時期が
 すべて手続開始の前に生じているのにもかかわらず、原状回復請求権が
 財団債権になるとするのは不合理ではないかとする質問が寄せられている。


3 破産手続開始後に管財人が破産法53条1項により双方未履行契約を解除
 した場合は、原状回復請求権は、破産法148条1項8号に規定する「破産手続
 開始後その契約の終了に至るまでに生じた請求権」に該当し、財団債権に
 なるようにも解されます。


4 しかし、一般財団債権とされる破産法148条1項所定の財団債権は、破産
 手続全体の利益のための債権として共益的性格を有するものであり、破産
 手続の遂行に必要な費用や、第三者の負担において破産財団が利益を享受
 する場合の第三者の反対給付請求権などである。


5 原状回復請求権が、管財人のした行為によって生じた請求権であるとして
 財団債権になると解する余地もある(同項4号)


6 本件で問題とされる原状回復請求権は、破産手続開始前である毀損行為や
 設備設置行為などに起因するものであって、破産手続開始と同時に選任され
 る管財人の行為に起因するものとはいえないと解される。


7 明渡請求権と原状回復請求権の関係
   これらを別個の請求権であるとする見解と、1個の請求権であるとする
  見解がある。


8 別個の請求権であるとする場合は、明渡請求権が財団債権で原状回復請求
 権が破産債権であると解することは可能である。


9 1個の請求権であっても、倒産法理によって2個の請求権が破産債権と財団
 債権という性質の異なる請求権として扱われることになった以上は、包摂関係
 が解消されるべきであると考えられる。