「限定承認」と「みなし譲渡」

1 相続税以外に、地方税法第73条の7により、不動産取得税は課税されない。


2 先買権行使により完全な不動産所有権を取得した場合、民法932条但書により
 「不動産の持分を移転した分」についてのみ不動産取得税が課税され、
 持分移転登記伴わない法定相続持分には課税されない。ということは、
 法定相続人が1人の場合には、先買権行使した場合でも、不動産取得税は
 非課税ということになる。
 上記地方税法が「限定承認について、特別な定めをしていない」ことによる
 帰結と考えられる。


3 限定承認の場合の、相続税課税は、
  相続財産価額から
  ・固有の相続債務
  ・みなし資産譲渡所得課税額
  ・基礎控除金額等
 を控除して、なお計算上残額がある場合にのみ課税される。


4 相続人は相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び
 遺贈を弁済すればよいことになる(民922)。
 この債権には被相続人の租税債務も含まれる。
 所得税法59条は、限定承認に係る相続・包括遺贈があったときは、
 その事由が生じた時に、その時における価額実務価格に相当する金額により、
 資産の譲渡があったものとみなすとしている。


5 従って、限定承認をしたときは、相続人は被相続人所得税について、
 準確定申告をして、所得税を納付しなければならない(国通5)。


6 結果的に、相続人は所得税を固有財産をもって納税する必要はない。


7 限定承認は民法上は有効な手段であるが、税法上は危険。
  予想した債務が存在せず、債務超過の状態にないという場合は、税金
 という余計な債務を作り出してしまうことになる。