1 破産終結決定がされて法人格が消滅した会社を主債務者とする保証人は、
主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張
してこれを援用することはできない(最判15年3月14日第二小法廷判決)。
2 会社が破産宣告を受けた後破産終結決定がされて会社の法人格が消滅した
場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべきで
あり、この場合、もはや存在しない債務について時効による消滅を観念する
余地はない。この理は、同債務について保証人のある場合においても変わら
ない。したがって、破産終結決定がされて消滅した会社を主債務者とする
保証人は、主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成した
ことを主張して時効の援用をすることはできないものと解するのが相当で
ある。
3 最二小判平成7.9.8金法1441号29頁は、主債務者である会社についての
破産手続が破産廃止により終了した後に、会社の債務(主債務)が時効消滅
し、これに伴い保証債務も時効消滅したとして、保証人の主債務者の時効
援用を認めた原審(東京高判平7.2.14判例時報1526号102頁)の判断を、
例文により、正当として是認した。
4 前掲最二小判平成7.9.8は、前記の原審確定事実等に照らし、異時廃止の
一般的な場合、すなわち、清算すべき財産が存在するために破産手続終了後
にも法人格が消滅しない場合について、実体法の解釈適用を示したものと
解される。
破産手続終了後に精算すべき財産が存在する場合には、(破産管財人が
換価困難な不動産を放棄した場合等これが当たる。)、前掲最二小判平成
7.9.8に従い、破産手続終了後に主債務の消滅時効が完成したことを主張して
時効を援用することができることになる、と解される。