求償権が破産債権である場合において財団債権である原債権を破産手続によらないで行使すること

1.弁済による代位により財団債権を取得した者は、同人が破産者に対して取得した求債権が破産債権にすぎない場合であっても、破産手続によらないで上記財団債権を行使することができる。(平23.11.22第三小法廷判決)(判タ1351-131)


2.弁済による代位により破産法上の財団債権を取得した者が、同人が破産者に対して取得した求債権が破産債権にすぎない場合であっても、破産手続によらないで上記財団債権を行使することができるかという点が問題となったものである。最高裁は、肯定説に立つことを明らかにした。


3.下級審では、倒産事件における配当率を少しでも上げようとするためかは不明であるが、どちらかと言えば否定説に立つ傾向にあったように思われる。


4.弁済による代位の原理・構造について判示した最三小判昭59.5.29,判タ530号133頁は、「弁済による代位の制度は、代位弁済者が債務者に対して取得する求債権を確保するために、法の規定により弁済によって消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権・・を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求債権の範囲内で原債権・・を行使することを認める制度」であるとしている。

5.また「代位弁済者が代位取得した原債権と求債権とは・・別異の債権ではあるが、代位弁済者に移転した原債権及びその担保権は、求債権を確保することを目的として存在する附従的な性質を有し、求債権が消滅したときはこれによって当然に消滅し、その行使は求債権の存する限度によって制約されるなど、求債権の存在、その債権額と離れ、これと独立してその行使が認められるものではない」と判示している。最一小判昭61.2.20,判タ592号71頁

6.肯定説によるならば、他の債権者は、否定説による偶然の利益を得ることはないが、代位弁済者も、何らかの偶然の利益を得るわけではない。利益状況をみると、肯定説を採用したとしても、他の債権者が不当に不利益を被るとはいい難いところである。