遺言執行者と相続財産管理人

【相続人が不存在の場合における相続財産管理人との権限競合】

1. 遺言者が全財産を遺贈(包括遺贈)したときは、全財産は受遺者に対し遺言者の死亡と同時に物権的に移転するから、遺言者に相続人がいなくとも、相続財産が存在しない。したがって、相続財産法人は成立しない。そうすると、遺言執行者と相続財産管理人との権限競合の問題は生じる余地はない。


2. 1.の包括遺贈の場合とは異なり、被相続人が遺言で相続財産の一部を特定遺贈した場合においては、遺言執行者の職務と相続財産管理人の職務が重なる。


3. 遺言執行者は、遺言者が遺言で処分した不動産につき、遺贈による所有権移転登記手続義務を負う。
 相続財産管理人も、被相続人の全財産を管理し、裁判所の許可を得て処分する権限を有するとともに、相続債権者及び受遺者に対し弁済すべき義務を負う。
 受遺者は相続債権者に劣後し、相続債権者に弁済した後でなければ弁済を受けることができない。
 そこで、遺言執行者と相続財産管理人の権限が競合する。