破産法240条第3項(相続人の破産)

1 条文
 第225条に規定する期間内にされた破産手続開始の申立てにより相続人について破産手続開始の決定があったときは、相続人の固有財産については相続人の債権者の債権が相続債権者及び受遺者の債権に優先し、相続財産については相続債権者及び受遺者の債権が相続人の債権者の債権に優先する。


2 第225条(破産手続開始の申立期間)
 相続財産については、民法第941条第1項の規定により財産分離の請求をすることができる間に限り、破産手続開始の申立てをすることができる。ただし、限定承認又は財産分離があったときは、相続債権者及び受遺者に対する弁済が完了するまでの間も、破産手続開始の申立てをすることができる。


3 民法第941条①(相続債権者又は受遺者の請求による財産分離)
 相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混同しない間は、その期間の満了後も、同様とする。


4 破産者たる相続人が熟慮期間中にすでに単純承認した場合、本来は、その単純承認により、相続人のいっさいの権利義務は破産者たる相続人に承継されるが、相続財産破産の申立てをすることができる期間内に、相続人に対して破産手続開始の申立てがなされた場合、相続債権者や相続人の債権者は、財産分離の請求をしなくても、相続人につき破産手続が開始すれば、相続財産および相続人の固有財産につき、それぞれ別個に清算手続がなされるものとの期待を抱くこととなる。


5 熟慮期間経過後であっても、法225条の期間内に対して破産手続開始の申立てがなされれば、本条が適用されることとなる。