1.年俸額のうち、固定給与として支払われる基本年俸(一階部分)が該当
年度の労働に対応して発生する賃金。
2.調整年俸制では、業績年俸(賞与)は該当年度の成績を評価して決定さ
れるので、当該年度の労働に対応して発生する。
3.業績賞与併用型確定年俸制の場合は問題がある。これを前年度の労働の
対価と解する余地もあるから、
しかし、年俸賃金請求権がその年度の労働とは全く無関係に発生すると
解するのは不自然であるから、年俸賃金はあくまで当該年度の労働に対
する対価であると考えるべき。前年度の業績評価は、当該年度の年俸
(賃金)額を確定するための要素を意味することになる。
4.業績年俸(賞与)の法的性格
業績年俸(賞与)は、「賞与」という名称を冠されているものの、
当該年度の労働の対価として当然に発生する性格の賃金を意味する。
5.年俸賃金請求権の発生要件
①賃金債権はすでに年度当初の確定時点で発生しているのか、それとも
②右の時点では賃金額が確定しているにとどまり、賃金請求権自体は
当該年度における現実の就労を要件に発生するのかが問題となる。
年俸賃金を当該年度の労働の対価と考える限り、②説をとるべきである。
6.年度途中の退職と年俸
賃金の請求権は、退職後は不就労ゆえに発生しないので、残金の支払
いを請求することはできない。この点は、不就労の原因が解雇にある場
合も同じである。(解雇の効力はもとより別の問題である。)