有益費と任意売却

1. 賃貸人が負担すべき必要費を賃借人が支出した場合、賃貸人に対し直ちにその償還を請求することができ、請求できる費用額の範囲は、賃借人が支出した金額の全額。


2. 賃借人が有益費を支出した場合、賃貸借が終了した時点で賃借物の価格の増加が現存していればその償還を求めることができ、請求できる費用額の範囲は、賃貸人の選択に従い、支出した金額か価格の増加額のいずれかとなる。


3. 最高裁昭和46年2月19日判決は、「建物の賃借人または占有者が、原則として、賃貸借の終了の時または占有物を返還する時に、賃貸人または占有回復者に対し自己の支出した有益費につき償還を請求しうることは、民法608条2項、196条2項の定めるところであるが、後、賃貸人が交替したときは、特段の事情がないかぎり、新賃貸人おいて旧賃貸人の権利義務一切を承継し、新賃貸人は右償還義務者たる地位をも承継する。