1 分別の利益について、実体法上、単純保証人からの主張は必要ではなく、保証債務は当然に分割される。
2 訴訟手続上は、分別の利益はその利益を享受すべき単純保証人からの主張を要する(全額の保証債務履行請求に対する抗弁となる。)とするのが通説実務である。
3 本判決は、単純保証人が、分別の利益を知りながらあえて自己の負担部分を超えて弁済した場合には主債務者に対する求償権が発生し、そうではなく、分別の利益を知らずに自己の負担部分を超えて弁済した場合には弁済受領者に対する不当利得返還請求権が発生するという理解に立つ。
4 また、利得者の悪意者性について、本判決は、貸金に係る過払金返還訴訟における一連の最高裁判例を踏まえたと思われる(法律上の誤解をしたことについてやむを得ないといえる特段の事情の有無を判断要素とする。)。
5 本判決は、不法行為について、その当時の状況に照らして社会通念上著しく相当性を欠くとはいえないとして、その成立を否定したが、これは過払状態に陥った後に貸金業者が約定の弁済を請求したことの不法行為性について判示した最二小判平29.9.4判タ1308号111頁を踏まえたものと思われる。