担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け、同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合における、当該債務者の相続人の民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」該当性(最第一小決令和3年6月21日判タ1492号78頁)

1 担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け、同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合、当該債務者の相続人は、民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」に当たらない。

2 民事執行法68条、188条の立法趣旨につき、旧法下の通説では、➀債務者に差押不動産を買い受けるだけの資力があるのであれば、まず差押債権者に弁済すべきであること、②債務者が差押え不動産を買い受けたとしても、請求債権の全部を弁済できない程度の競落代金の場合には、債権者は同一債務名義をもって更に同一不動産に対して差押え、強制執行をすることができるため、無益なことを繰り返す結果になり、これを許す場合には競売手続が複雑化すること、③事故の債務すら弁済できない債務者の買受申出を許すと、代金不納付が見込まれ、競売手続の進行を阻害するおそれが他の場合より高いこと、を理由に、強制競売において債務者の買い受け資格を否定していた。

3 相続人については、➀目的不動産の買受けよりも被担保債権の弁済を優先すべきであるとはいえないし、②買受けを認めたとしても同一の債権の債権者の申立てにより更に強制競売が行われることもない。また、③その相続人については、前2③のおそれが類型的に高いとはいえない。

3 免責の法的性質につき、本決定は、従前の判例最判平成11年11月9日判タ1017号108頁等)と同じく、通説とされる自然債務説を前提としている。