数個の物上保証の債権と予定不足額

1.根抵当権設定により複数の債務の物上保証をした者が、債務者の破産手続
 開始決定後、担保不動産の任意売却により上記のうちの一部の債務を全額
 弁済した場合でも、債権者は、上記複数の債権すべてついて破産債権として
 行使することができる。(大阪高裁平成20.4.17判決)(金法1841-45)

2.複数の債務についての全部義務者または物上保証人が、そのうち1つの
 債務を全額弁済したとしても、他の債務が残存している以上、当初約束した
 責任を果たしたとは言えず、逆に債権者は、担保を設定した当初の目的を
 いまだ達していないと言えるのであり、その利益状況は、1個の債務の一部
 が弁済された場合と異なるものではない。

3.本件のように根抵当権の場合、極度額の限度では担保される債権全体が
 実質的に1個の債権であり、債権者としては、元本確定後に被担保債権の
 うち極度額に満たない1個の債権について全部弁済を受けたとしても、極度
 額の限度で優先弁済を受けるという根抵当権設定の目的を果たして完全な
 満足を得たとは言えない。