後遺障害受傷者が死亡

1.
 a.逸失利益最判平成8.4.25)
  いわゆる「継続説」に立ち、
 「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を
 喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益
 算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の
 時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における
 死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の
 事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当
 である。
 b.交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより、
  賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ、他方被害者
  ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなく
  なるというのでは、衡平の理念に反する。

2.
 a.事故の被害者が別の事故で死亡した場合の将来の介護費用(付添看護費)
  について、最判平成11.12.20は、いわゆる「切断説」に立ち、「介護費用の
  賠償については、逸失利益の賠償とはおのずから別個の考慮を必要とする。
 b.もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく、その費用をなお加害者
  に負担させることは、被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える
  結果となり、かえって衡平の理念に反する。
 c.一時金賠償方式を採る場合には、損害は交通事故の時に一定の内容の
  ものとして発生したと観念され、交通事故後に生じた事由によって損害の
  内容に消長を来さないものとされるのであるが、右のように衡平性の裏付け
  が欠ける場合にまで、このような法的な擬制を及ぼすことは相当ではない。