◇東京地裁 平22.7.8判決 判タ1338-270
1 論点
① 弁済期の到来した債務の支払が出来ない場合に限られず、弁済未到来の
債務について将来支払えないことが確実である場合にも、支払不能に当たる
とする見解。
② 支払不能は、弁済期の到来した債務の支払可能性を問題とする概念である
ので、弁済期未到来の債務を将来弁済できないことが確実に予想されても、
弁済期は到来している債務を現在支払っている限りは、支払不能ではない
とする見解。
2 支払不能は、弁済期の到来した債務の支払可能性を問題とする概念である
ことから、支払不能であるか否かは、弁済期の到来した債務について判断
すべきであり、弁済期が到来していない債務を将来弁済できないことが確実
に予想されても、弁済期の到来している債務を現在支払っている限り、
支払不能ということはできない。と判示して、基本的にYの主張に沿った
解釈をした。
3
① 支払不能とは、「債務のうち弁済期にあたるものにつき」一般的かつ
継続的に弁済することができない状態をいうとする破産法2条11項の規定
の文言からは相当に離れるものであること、
② 現に弁済期の到来している債務を基準にすることなく、将来における
「債務不履行の確実性が現在の弁済能力の一般的欠如と同視できる場合」
であるか否かにより「支払不能」の有無を決するとすると、その判断には
多分に相対的な評価が入らざるを得なくなり、支払不能の概念が不明確に
なるおそれが強い。