地主承諾書 (金法1917-113)

1 土地の賃貸人および転貸人が、転借人所有の地上建物の根抵当権者に対し、
 借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じたときは通知する旨の条項を
 含む念書を差し入れた場合において、賃貸人および転貸人が地代不払いの
 事実を土地の転賃貸借契約の解除に先立ち根抵当権者に通知する義務を負い、
 その不履行を理由とする根抵当権者の損害賠償請求が信義則に反すると
 いえないとされた事例(最高裁平22.9.9判決)(金法1917-113)


2 金融機関は、借地上建物に抵当権の設定を受けようとする場合、実務上
 一般的に、借地上建物への抵当権の設定や将来競争手続等で土地賃借権が
 競落人に譲渡されることなどについての承諾書を地主から徴求している
(承諾書を「地主承諾書」という)
 地主承諾書には、本件念書と同様に、借地人に賃料不払いなどの賃貸借契約
 の解除に先立って借地上建物の抵当権者に通知する旨の条項(以下、「事前
 通知条項」という)も盛り込まれているのが通常である。


3 論点 
 ① 解除の有効性が問題となった事案と、
 ② 事前通知義務違反を理由とする地主の建物抵当権者に対する損害賠償義務
  の有無が問題となった事案。


4 事前通知条項に定める地主の借地上建物抵当権者に対する通知義務は、
 地主と建物所有者との間の土地賃貸借契約には関係ないとするものと、
 そもそも事前通知条項に記載された事前通知は法的な義務ではないとする
 ものが見られる。


5 本件では地主承諾書の差入れにあたって事前通知条項の趣旨を地主が
 理解することができたというべき事情があったことが前提となっている上、
 原審ではXの過失を理由として8割の過失相殺がされている。