事業再生ADR手続の申請に向けて行われた支払猶予の申入れ等の行為が会社更生法88条1項所定の「支払の停止」に該当せず,同項による否認が認められなかった事例 平23.8.15東京地裁民事第8部決定(判タ1382-349)

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【1】法88条1項所定の「支払の停止」については,破産法の否認権における場合と同様,
弁済能力の欠乏のために弁済期の到来した債務を一般的かつ継続的に弁済することが
できない旨(支払不能の旨)を外部に表示する債務者の行為をいうと解されている。


【2】債務者が弁済を継続できないために債権者に対して支払の免除や猶予を求める
行為は,一般的には「支払の停止」の一例といわれている。


【3】では,事業再生ADR手続の申請に向けて行われた支払猶予の申入れ等の行為は
「支払の停止」に該当するであろうか。



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【1】本件各決定は,支払猶予の申入れ等の行為であっても,合理性のある再建方針や
再建計画が主要な債権者に示され,これが債権者に受け入れられる蓋然性があると認
められる場合には,一般的かつ継続的に弁済することができない旨を表示する行為に該
当しないとして,「支払の停止」ということはできないと解するのが相当であると説示。


【2】伊藤眞 同旨(金法1874-146)