第三者の占有と収益執行

1 条文
 95条(1) 管理人は,強制管理の開始決定がされた不動産について,管理並びに収益
       の収取及び換価をすることができる。
 96条(2) 管理人は,不動産について,債務者の占有を解いて自らこれを占有するこ
       とができる。


2 第三者が不動産を占有している場合の管理方法
(1)第三者が不法占有者である場合
   管理人は,その占有者から不動産の明渡しを受け(任意に明け渡さない場合には,
   訴えを提起し,債務名義を得て,その執行による),自らこれを占有する。

(2)第三者が債務者との関係で占有権原を有し,対抗要件も具備している場合
   占有者が債務者に給付すべき賃料等を,管理人が収益として収取

(3)第三者が債務者との関係で占有権原を有するが,対抗要件を具備していない場合
  1. 占有者が不動産を無償または著しく低額な賃料等で占有しており,
    管理人がその占有継続を不当と考える場合,占有者にその明渡し
    を求めうるか否かが問題となる。
   
   (1) 強制管理の実質が継続的な債権執行の性格を有することを重視すると,
   強制管理開始前の債務者の処分行為の拘束を常に受けると解することも
   不可能ではない。
   
   (2) 強制管理は不動産執行であり,強制管理による差押えは不動産自体の
   処分制限効を有するのであるから,管理人の占有者に対する明渡請求の可否は,
   対抗要件の具備の先後によって決するのが相当である。

   
   (3) (1),(2)の考え方がある。


  2.
   (1) 債務者の設定した用益権に管理人が拘束されるか否かを,対抗要件の具備
   の先後によって決するという立場をとりつつ,第三者が既に不動産を占有してい
   るときは,管理人の権限としてその者の占有を解くことはできず(96(1)参照),
   債務者との間で用益権が有効である以上,管理人が債務者に代わって引渡しを
   訴求することもできないとの見解もある。
   
   (2) 96条1項は,管理人による債務者の実力排除を規定したものであって,
   第三者に対する明渡しの訴求の可否とは直接関係がなく,管理人との関係
   で占有権原を主張できない第三者に対し,管理人が明渡しを訴求することは,
   その管理権の行使として可能であると解される。