1.非公開会社の株式譲渡は、
① 株式譲渡契約の締結
② 株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)の承認(定款に
おいて別の機関の承認を要するとの定めをしている場合にはその
定めによる)(法139条1項)
③ 株主名簿の名義書換(法130条)
④ 株券の交付(株券が発行されている場合)
2.株券発行会社以外の会社においては、意思表示のみによって株式を譲渡
することができるが(128条1項本文の反対解釈)、株式の譲渡または質入
については、株式を取得した者の氏名・名称および住所を株式名簿に記載
・記録することが会社その他の第三者に対する対抗要件となる。
3.
(1) 譲渡・質入の効力発生要件
① 株券不発行会社
当事者間の意思表示のみにより効力発生
② 株券発行会社
当事者間の意思表示に加えて、株券の交付が必要(128条1項、146条2項)
(2) 譲渡・質入の対抗要件
① 株券不発行会社
譲渡・質入・・株主名簿への記載・記録
② 株券発行会社
a.譲渡・・株主名簿への記載・記録(株式会社に対する対抗要件)
・・株券の交付(株式会社以外の第三者に対する対抗要件)
b.質入・・株券の継続占有
① 株式会社
② その他の第三者に対する対抗要件(147条2項、3項)
4.① 株券発行会社においては、株式の譲渡は、原則として当事者間の意思表示
に加えて当該株式に係る株券が交付されなければその効力を生じない
(128条1項)株券がすでに発行されているか、または株券を発行すべき株式
の譲渡については、株券の交付は当事者間においても権利移転の要件で
あり、対抗要件にとどまるものではない。
② 株式会社との関係での株式譲渡の対抗要件は株主名簿への記載または記
録であり(130条1項、2項)、明文規定はないが、二重譲渡の際の第三者
対抗要件は株券の占有であると解されるが、株券発行会社の株式譲渡に
ついては善意取得制度が存在するため、第三者に対する対抗要件が実際
に意味を持つ場面は譲渡担保の場面を除きそれほど多くはない。
③ 株券発行会社以外の株式会社においては、株式の譲渡の効力について
明文の規定がおかれていないため、民法の原則に戻って当事者間の意思
表示によってその効力が生ずることになる(民法549条、555条、586条等)
株主名簿への記載または記録が、株式会社およびその他の第三者に対する
株式譲渡の対抗要件とされている(130条1項)
④ 以上の議論はいずれも譲渡に関するものであり、相続、合併などに伴う
包括承継の場合には、株券の交付は株式の移転の効力要件ではない。