仮登記と破産法49条

1.仮登記は、本登記(終局登記)をするための手続法的又は実体法的要件
 が完備しない場合に、将来なすべき本登記のためにあらかじめ順位保全
 目的をもってする予備登記の一種である。
2.① 条件不備の仮登記
  ② 請求権保全の仮登記
  ③ 条件付権利(又は期限付権利)の仮登記
3.「条件不備の仮登記」(「1号の仮登記」ともいう)は、不動産に関する
 実体的な物権変動は既に発生しているが、本登記の申請に必要な手続上の
 条件が具備しないときにされる仮登記である。
4.①「請求権保全の仮登記」(「2号の仮登記」ともいう)は、当事者間
   に登記すべき物権変動は未だ発生していないが、将来その物権変動を
   生じさせる債権的請求権が発生している場合に、その「請求権ヲ保全
   セントスルトキ」及び「右ノ請求権カ始期付又ハ停止条件付ナルトキ
   其他将来ニ於テ確定スヘキモノナルトキ」にされる仮登記である。
  ②「条件付権利(又は期限付権利)の仮登記」は、登記すべき物権変動
   そのものが始期付又は停止条件付、その他将来において確定すべきも
   のであるときに、不登法2条2号に準じてされる仮登記である。
5.1号・・ 破産管財人に対抗できる
  2号・・ 破産管財人に対抗できる考えが有力
6.即ち、
  ① 中間処分を排除できる効力の点では、1号仮登記と2号仮登記との
    間に差がないことを強調し、破産手続開始前に2号仮登記を取得し
    ている者は、破産管財人に対して本登記請求をなすこともできる。
  ② ただし、仮登記権利者の地位が、債権的権利にすぎない場合には、
    破産管財人は、権利の基礎となっている契約そのものを解除する
    ことによって(破53Ⅰ)、本登記請求に対抗することができる。
  ③ 仮登記担保のように、物権的権利が基礎となっている場合には、
    担保権者が別除権の行使として本登記請求をなせば、破産管財人
    それに応じざるをえない。(伊藤253頁)
7.最判S42.8.25
  ① 知事の許可を経ない農地売買契約における買主が、当該農地につい
    て売主の支払停止後に所有権移転請求権保全の仮登記をした場合で
    あっても、買主は、破産管財人に対し、右仮登記に基づき、知事に
    対する農地法所定の許可申請手続および右許可を停止条件とする
    所有権移転の本登記手続を求めることができる。
  ② 被上告人は本件田畑売買につきいまだ知事の許可を受けず、したが
    って原判示仮登記を有するにすぎない以上、本件田畑は売主が破産
    宣告を受けるとともに破産財団に編入されるものである。(但し、
    ①のとおり、破産管財人に対して本登記の請求はできる。)