賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力(最判H26・9・25判タ1407−69)

1.借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力は、原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り、前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について生ずる。
2.原審は、賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟(以下「賃料増減額確認訴訟」という。)の訴訟物は、当事者が特に期間を限定しない限り、賃料が増減された日から事実審の口頭弁論終結時までの期間の賃料額であるとし(以下、この考え方を「期間説」という。)、本件訴訟において原告が本件賃料増額請求による賃料増額を主張することは、前訴判決の既判力に抵触し許されないとして、原告の請求を全部棄却した。
3.実務は、賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額の相当性ないし相当賃料額〔を賃料増減額確認請求訴訟の訴訟物と〕解していた(以下、この考え方を「時点説」という)。
4.賃料増減額確認請求訴訟においては、賃料増減請求後に生じた事情については直接的な審理判断の対象とはならないといえ、その訴訟物を事実審口頭弁論終結時までの賃料額とする期間説は、審理の実態に沿わない面があるといえる。
5.これまで、賃料増減額確認請求訴訟においては、特定の日「から」、あるいは特定の日「以降」の賃料額が幾らであることの確認を求めるという請求の趣旨が一般的で、認容判決も同様の主文とされていたが、一方で終期が明示されることはないのが通常であった。