農地法5条許可の売買と和解条項

1.条項
(1)被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の農地(以下「本件土地」という。)を○○県知事の農地法5条の規定による許可を条件として代金○○万円で売り、原告はこれを買い受ける。
(2)被告は、原告に対し、平成○○年○月○日限り、本件土地につき、○○県知事に対し、農地法第5条の規定による所有権移転許可申請手続をする。
(3)前項の許可があったときは、被告は、原告に対し、本件土地につき、上記許可の日の売買を原因とする所有権移転登記手続をする。この登記手続費用は、原告の負担とする。
2.補足説明
(1)農地の買主の売主に対する所有権移転登記手続請求は、知事等の許可を受けなくても、将来の給付の請求としてその必要がある限り、許可されることを条件として請求することができる(最判昭39・9・8民集18・7・1406)。
(2)第3項により、原告が単独で登記手続を申請するには、知事等の許可が効力発生の条件となるから、許可のあったことを証明し、執行文の付与を受けなければならない(昭40・6・19民甲1120民事局長回答・先例集追?443、昭36・10・12民甲2546民事局長指示・先例集追?698)。
(3)農地の売買による所有権移転登記手続をする旨の合意の記載に関し、登記原因日付を契約の日とする考え方がある。
知事等の許可を受けることを条件として売買が行われたとしても、それは法律上当然必要なことを約定しただけに止まり、売買契約に停止条件を付したものということはできない。それゆえ、知事等の許可があった時から効力を生じたものと解すべきであって、契約成立の時に遡って効力が生じるのではない(最判昭30・9・9民集9・10・1228)のであるから、許可の日を原因日付とするのが妥当である。