預金契約解約後における取引経過開示義務の存否(金法1935-4)

1. 今回の事案(東京地平22.9.16(金法1924-119)および控訴審の東京高判平23.8.3(金法1935-118))では、預金者は生前に預金取引を解約し、その死亡後に相続人から開示請求を受けた、したがって、開示請求の時点ではすでに預金取引は存在しなかったという点である。

2. 控訴審は、委任契約や準委任契約の終了後、受任者は遅滞なく経過および結果を報告すべき義務があるにとどまり、いつまでも過去の委任事務の処理状況の報告を求められるわけではないことから(民法645条、656条)、預金契約においても、銀行は元預金者に対して、従前の取引経過および解約の結果報告を完了した後も、過去の預金契約について、預金契約締結中と同様の取引経過開示義務を負い続けると解することはできないと判断した。(金法1935-118項)

3. 21年判決が出された後、実務の関心は、開示請求が認められる範囲や方法、手数料徴収の可否、いかなる開示請求が権利の濫用に当たるかといった具体的な論点に移っている。