相続財産の清算

財産管理人選任等事件の実務上の諸問題(23,24頁)

 債務超過とは、相続財産中、総負債額が総資産額を超過している状態のこと
であり、この場合には、①の債務弁済及び②債務の一部免除による清算のほか、
③破産手続による清算が行われる。

1.債務弁済による清算
 ① 第1次の清算(すなわち、請求申出期間内に申出をしたか、管理人に知
   れている相続債権者・受遺者のための清算)が、請求申出期間の満了後
   に行われ(民法957Ⅱ、929、931)
 ② 第2次の清算(すなわち、請求申出期間内に申出もなく、管理人にも知
   れていない相続債権者・受遺者のため清算)が、この残存した積極財産
   をもって相続人捜索の公告期間内に申出がされたものに限り行われる
  (民法957Ⅱ、935)
 ③ 相続人捜索の公告期間が経過すれば、管理人に知られていない相続債権
   者・受遺者はもはや権利行使できない(民法958、958の2)
2.債務の一部免除による清算
 ① (1)相続財産法人の清算手続である以上、最終的には積極財産(資産)と
    消極財産(負債)をいずれもゼロの状態にしなければ法人自体が消滅
    しない。
   (2)積極財産も消極財産もゼロの状態になれば、相続財産法人が消滅し、
    相続財産の管理も終了する。
 ②実務
   (1)管理人は、債務超過が判明した時点で、法定の弁済の時期、順序、方法
    等に従った配当表を作成し、相続債権者等に残債務を免除する旨の書面
    を求めるか、
   (2)管理終了に関する同意又は管理終了をすることについて異議がない旨の
    書面を求めるか、
   (3)相当期間内に配当することについて異議がなければ黙示的に免除された
    ものと解するか、
    
    により債務超過の状態を解消し、相続財産の清算を結了する運用を行って
    いる。