遊泳者と漁船の衝突事故

1 海で遊泳中の者と漁船が衝突した事故について、漁船を操船していた船長に
 前方注視義務違反、減速義務違反の過失があるとして、不法行為が成立する
 とされた事例


2 海で遊泳中に漁船と衝突して死亡した被害者の相続人が加害者に対する
 損害賠償請求訴訟と併合して保険会社に対し加害者に代位して船主責任保険
 の保険金請求訴訟を提起することができるとされた事例
 (判タ1306-293、東地判H20.3.5)


3 被告は本件浜に海水浴に来た遊泳者がいることを認識していたのであるか
 ら沖合を遊泳している者もいることを予見し得たし、本件事故直前の被害者
 の行動がその予見可能性を害するような特異なものであったともいえない。
 被告が針路前方を注視し、低速で航行していれば、10秒ないし20秒の間隔で
 息継ぎのために浮上する被害者を発見し、衝突する前に停止ないし回避する
 ことができたから、結果回避可能性もあった。


4 被告の過失を認め、保険金請求権が保険事故の発生と同時に被保険者と
 損害賠償請求権者との間の損害賠償請求権の確定を停止条件として発生し、
 被保険者が負担する損害賠償額が確定した時に上記停止条件が成就して保険
 金請求権の内容が確定し、同時にこれを行使することができることになると
 いう趣旨であると解した。


5 本判決は、上記約款の規定が上記自動車保険普通約款の規定と同趣旨の
 ものであると解したうえ、最高裁判例最判S57.9.28)に従って、相続人ら
 の被告加入の保険者に対する保険金請求訴訟を将来の給付の訴えとして許さ
 れると判断した。


6 被害者は、本件衝突地点で遊泳するに当たって、自己の存在を明示するた
 めの標識を設置していなかったことなどからすると、本件事故の発生には、
 被害者側にも一因があったというべきであるが、前記認定のような本件事故
 の態様からすると、被害者の過失割合は、原告らの自認する3割を超えない
 ものというべきである。