更新料・敷引特約に関する判例(最高裁判決の骨子)

1. 更新料判決(2011年7月15日)
1) 更新料の法的性質
一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質。


2) 消費者契約法10条前段要件
更新料条項は、特約により賃借人に負わせるという意味において、任意規定の適用による場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重するもの。


3) 消費者契約法10条後段要件
更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、「基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。


2. 敷引特約判例(2011年3月24日)
1) 敷引特約の法的性質
敷引特約は、通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものというべきである。


2) 消費者契約法10条前段要件
賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものであるから、賃借人は、特約のない限り、通常損耗等についての原状回復義務を負わず、その補修費用を負担する義務も負わない。本件特約は、任意規定の適用による場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重するもの。


3) 消費者契約法10条後段要件
通常損耗等に充てるべき金員を敷引金として授受する旨の合意が成立している場合には、その反面において、上記補修費用が含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるのが相当であって、敷引特約によって賃借人が上記補修費用を二重に負担するということはできない。
通常損耗等の補修の要否やその費用の額をめぐる紛争を防止するといった観点から、あながち不合理なものとはいえず、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害する。