◇ 生命保険約款において、保険料を猶予期間末日までに支払わないときは
保険契約が同日の経過により当然に効力を失う旨を定めたいわゆる「無
催告失効条項」は、消費者契約法10条の規定により無効であり、無催告
失効条項によって生命保険契約が失効することはないとされた事例
(金法1882-82、東高判H21.9.30)
1 民法540条、541条によると、保険会社は、猶予期間の末日までに前月分
の保険料の支払がない場合には、相当の期間を定めてその履行を催告し、
その相当期間内に履行がないときに、保険契約者に対し解除の意思表示
をすることにより、保険契約を終了させることができるのが原則である。
そうすると、本件無催告失効条項は、Y保険会社が保険料支払を催告
することを要しないとしている点および保険会社が保険契約者に対し契約
解除の意思表示をすることを要しないとしている点において、民法の任意
規定(540条、541条)の適用による場合に比し、消費者である保険契約者
の権利を制限しているものであることは明らかである。
2 消費者契約法10条の規定は、民法、商法その他の法律の公の秩序に関し
ない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の
義務を加重する消費者契約の条項であって、民法1条2項に規定する基本原
則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とするものである。
3 本件無催告失効条項は、消費者であるXに重大な不利益を与えるおそれ
があるのに対し、その条項を無効にすることによってY保険会社が被る
不利益はさしたるものではないというべきであるから、民法1条2項に規定
する基本原則(信義誠実の原則)に反して消費者の利益を一方的に害する
ものといわざるを得ない。
4 本判決は、消費者契約法の適用される保険契約について同法10条を適用
してその無催告失効条項を無効にした初めての判断である。