◇ 無剰余であることを理由に強制競売の手続を取り消した決定に対する執行
抗告において、抗告審において優先債権者の同意を得たことが証明された
ことから、強制競売の手続を取り消す必要がないとして、原決定が取り消さ
れた事例(判タ1304-300)
1 強制競売を申し立て、執行裁判所は、その開始決定をした。
執行裁判所は、現況調査及び評価並びに債権調査を経て、手続費用が約
36万円、抵当権の被担保債権額が約930万円であるにもかかわらず、
買受可能価格が約300万円でしかないものと判断し、その旨の無剰余
通知をした。
執行裁判所は、所定の期間内に、優先債権者(抵当権者)から手続続行
の同意を得たことの証明がされなかったので、強制競売手続を取り消す
旨の決定をした。
執行抗告を申し立てるとともに、抗告審において、優先債権者(抵当権
者)から得た同意書を提出した。
2 この取消決定に対する抗告審において、上記の同意の証明がされたとき
は、当該強制競売手続を続行しても、もはや優先債権者を害するおそれが
ないから、あえて当該強制競売手続を取り消す必要がない。
競売不動産の売却により、差押債権者は手続費用を回収できるし、債務
者も総債務を減少させることとなるから、差押債権者が、これによって
不利益を受けることとなる優先債権者の同意を得たことを証明したときは、
競売不動産を売却することができることとされた(平成16年改正による
民事執行法63条1項、2項)。