1 現預金等「可分」にみえる遺産の調整機能
2 預貯金
ア 当然分割
イ 銀行実務などでは、相続人の一人が銀行に対して遺産である預金のうち、
相続分に応じた額の払戻しを請求しても、ただちに応じないことがある。
ウ 一部の共同相続人が、他の共同相続人の同意なしに銀行に対して、自分
の相続分相当額について、相続財産である預金の払戻しを求めた場合、
払戻しを認めるのが確定した判例となっている。
3 定期貯金
ア 旧郵便貯金法において、「一定の据置期間を定め、分割払いをしない
条件で一定の金額を一時に預入するもの」とされている(7条1項3号)。
「定額郵便貯金は、半年複利で利子計算する(郵便貯金規則5条5項、6項)
など貯金者に有利な貯金として設定されているところ、法はそのような取
扱いをする反面として、多数の利用者を対象とした大量の事務処理を迅速
にかつ画一的に処理する必要上、上記のような権利行使の面における制限
を付したと解される。
イ 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の附則5条
3号により、同法施行の際、現に存する定額郵便貯金は、「なおその効力を
有する」とされている。
4 現金
「相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産
として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の
支払いを求めることはできないと解するのが相当である」と、簡単な理由を
述べているだけである(最二判H4.4.10)。
最高裁は、預貯金などの可分債権とは異なり、現金は当然分割されるもの
ではないと判断している。
5 可分債権を遺産分割の対象に含める合意
相続人間において、可分債権を遺産分割の対象に含める合意をした場合
には遺産分割の対象となるとする判例がある。