給付(一般先取特権)による差押

1. 先取特権は、一定の種類の債権について、法律上当然に発生するものであるから、
その発生原因事実としては、先取特権の付与される被担保債権の請求原因事実を立証すれば足りる。


2. 給料債権の請求原因は、
(1) 雇用契約の存在
(2) 給料の定め
(3) 労務の提供(民624条)
である。


3. 
(1) 2.(1)を立証するものとして、労働者名簿
(2) 2.(2)を立証するものとして、賃金台帳、過去の給料明細書、給料の明細の記載がある給料袋、過去の給料の銀行振込みの証明書、所得税源泉徴収票就業規則等の賃金規定等が、通常予想される。


4. それらの成立の真正についても立証が要求される。2.(3)は2.(1),(2) 立証のための書証から推認し得ることが多い。


5. 相手方(債権者)らの抗告人(債務者)に対する各退職金支払請求権を被担保債権とする雇用関係の一般先取特権の存在を証明する文書の提出があるとされた事例(判タ1323-267、東高裁平成21.11.16)


6. 
(1) 本件は、退職金支払請求権を被担保債権とする雇用関係の一般先取特権についての事例判断
(2) 退職の有無か争いになった


7. 【事案の概要】
相手方らが、抗告人に対する雇用契約に基づく各退職金支払請求権を被担保債権をする雇用関係の一般先取特権民法306条2号、308条)に基づき、抗告人の第三債務者に対する預金債権の差押・転付命令を申し立て、原審が同命令を発した事案について、抗告人が執行抗告した。