1 共同提言(判時1692号162頁)は,原則として専業主婦につき全年齢平均賃金
をとるとしている。
全年齢を採用したということは,視点を変えれば,主婦業が年功序列的な収入
差に親しまないこと,すなわち,家事労働には年齢差や学歴差がないというこ
とにもなる。
2 高齢主婦の場合は,主婦への家事寄与度が少なくなり,一家の収入に対する貢
献度も減り,本人も体力的に衰え,稼働能力が量的にも質的にも低下していく
のが通常である。そこで,平均賃金を修正する考え方が出てくる。
3 判例の動向を見ると,全年齢でなく65歳以上の主婦の休業損害,逸失利益の
基礎収入算定に当たって,賃セ65歳以上の平均賃金を採用したうえ,これを
30%〜50%の範囲内で減額した例もある。
4 三庁合同提言では,原則として専業主婦については全年齢平均をとるとしつつ,
一方,「年齢,家族構成,身体状況,家事労働の内容に照らし,生涯を通じて
全年齢平均賃金に相当する労働を行いうる蓋然性が認められない特段の事情が
存する場合は,年齢別平均賃金を参照して適宜減額する」としており,修正余
地がある。
5 一般的には,入院期間中を完全休業とし,通院期間を後遺症の症状や通院回数,
家族構成等を総合して期間ないし部分休業を決めざるを得ない。
判例の動向を見ると,入院日数を100%認め,通院日数の何%かを減額したり,
通院期間を修正したり,減額率を逓減する等の方法がとられている。