17条決定と過払 福岡高裁 H24.9.18第1民事部判決 (判タ 1384-207)

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(1) 特定調停法における手続は申立人の経済的再生を目的とするものであり,
  申立人の相手方に対する債務の確定及び減免,支払猶予等を中心とした
  手続であること

(2) 本件の特定調停事件における手続は,専らXのYに対する債務の減免等を
  目的としたものであり,その際,Xは,Yとの取引履歴等の開示を受けておら
  ず,過払金の発生について説明を受けたことはなく,過払金の有無及びその
  額が争点となったものではなかったことからすれば,XのYに対する過払金返
  還債権については,その対象とはされていないものと解するのが相当。


2 裁判の形式を採用している17条決定について,錯誤を理由としてこれを無効と
  することはできない旨のYの主張については,
  
  (1) 17条決定は,当事者の互譲及び合意を前提とする民事調停制度
     における手続であること
  (2) 17条決定をするに当たっては,当事者双方のために衡平に考慮し,
     一切の事情を見て,事件の解決のために必要な決定をすることが
     できる旨定められており,権利義務関係の存否の判断を目的とする
     訴訟手続における判決等とは異なることに加え,
  (3)  取下げ等なき限り,当事者の意思にかかわらず何らかの法的効力が
     生じる判決及び決定等とは異なり,17条決定は,当事者又は利害
     関係人から所定期間内に異議が申し立てられた場合にはその効力を
     失う旨定められていること
  
  民事調停法18条2項からすれば,17条決定は,裁判所による最終的な調停案
  の提示であり,これに対する異議申立てをしないとの当事者等の消極的合意を停
  止条件として裁判上の和解と同一の効力を生じる制度,すなわち和解と同様,当
  事者等の合意に基礎を置いた紛争解決のための制度であると解するのが相当。