受取人の変更と否認

  他人の死亡により保険金額の支払をすることを約した生命保険契約の
 契約者兼保険金受取人が死亡保険金の受取人を変更する行為は、特段の
 事情がない限り、旧破産法72条1号所定の否認の対象とはならない。
 (金法1803条90号)
1.事案
  平成13年12月14日変更 平成14年12月23日死亡 保険金5000万円
  保険金受取人をA、その後破産宣告を受けたA会社の破産管財人Xは、
 Yに対し、上記保険金受取人をA会社から取締役Yに変更する行為。
2.具体的な死亡保険金請求権は被保険者の死亡時に初めて発生するもの
 であり、被保険者の死亡前において、保険金受取人たる地位それ自体を
 一定の金銭的額面を有する財産権と評価することはできず。(原判決破棄)
3.死亡保険金請求権は、被保険者の死亡時に初めて発生するものであり、
 保険契約者の払い込んだ保険料と等価の関係に立つものでも、被保険者
 の稼働能力に代わる給付でもないから、実質的に保険契約者または被保
 険者の財産に属していたと見ることも出来ない。
4.特段の事情
 ① 本件受取人変更は、本件保険契約から1年後にされたもので、
 ② それまでの支払保険料は100万円程度。
 ③ 本件受取人変更当時、被保険者は通常の健康体であったことからして、ない。