1.重複して譲渡担保を設定すること自体は許されるとしても、劣後する譲渡担保
に独自の私的実行の権限を認めた場合、配当の手続が整備されている民事執行
法上の執行手続が行われる場合と異なり、先行する譲渡担保権者には優先権を
行使する機会が与えられず、その譲渡担保は有名無実のものとなりかねない。
このような結果を招来する後順位譲渡担保権者による私的実行を認めることは
できない。(最判平成18年7月20日)
2.処分行為の効力と通常の営業の範囲
① 通常の営業の範囲における処分が債権者との関係において設定者に許さ
れるとしても、それは、単に処分のみを問題とするのではなく、それに
続く補充が必要である。
② 補充がなされない以上は処分行為自体が権限外の行為である。
当初から補充の見込みや予定がないままに処分を行った場合について、
通常の営業の範囲を超える不適正な処分となる。