担保不動産収益執行と他の方法による賃料の差押

1 当該不動産の賃料等に対する債権差押命令が先行して効力を生じた後に、
 給付義務者に対して担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じたときは、
 先行した債権差押命令の効力は当然に停止し、収益執行の手続に「吸収」
 される(民事執行法188条、93条の4第1項本文)。


2 効力を停止された債権差押命令の債権者は、収益執行の手続において、
 配当等を受けることができる(法188条、93条の4第3項)。


3 滞納処分としての債権差押が先行して効力を生じた後に、給付義務者に
 対して担保不動産収益執行の給付命令が送達されたときについては、調整
 規定が設けられていない。


4 滞納処分としての差押と債権に対する強制執行については、滞調20条の
 3ないし8の調整規定があり、これが「滞納処分による差押がされている
 債権を目的とする担保権の実行又は行使」について準用されているが(滞調
 20条の10)、担保不動産収益執行はこれに該当しない。


5 先行する滞納処分が優先するため(先着手主義)、収益執行の手続において
 は、当該賃料等を収取することができない。配当に充てるべき金銭を生ずる
 見込みがないときは、収益執行の手続を取り消すことになる(法188条、106条
 2項)


6(93条の4の立証趣旨)
  平成15年改正法により、強制管理と法定果実に対する債権執行の関係が明確
 にされ、法定果実に対する個々の債権差押や債権仮差押が先行していた場合で
 あっても、強制管理開始決定の効力が給付義務者に対して生じたときは、その
 債権差押や債権者仮差押はその効力を停止することとされた。


7 なお、給付請求権に対する滞納処分と強制管理との関係については、5のと
 おり先着手主義によるべきものと解されている(条解民事執行規則19頁)。