保証委託取引と保証債権

1.信用保証協会を債権者とし、被担保債権の範囲を「保証委託取引により生ずる
 債権」として設定された根抵当権の被担保債権に、信用保証協会の根抵当債務
 者 に対する保証債権は含まれない。(最判H19.7.5)

2.民法398条の2第2項は、根抵当権の被担保債権の範囲は、「債権者との特定の
 継続的取引契約によって生ずるもの」または「債務者との一定の種類の取引に
 よって生ずるもの」に限定して定めなければならないものとしている。

3.民法398条の2第2項に規定する「一定の種類の取引」は、被担保債権の具体的
 範囲を決する客観的基準として第三者に対しても明確なものでなければならない
 とされている。

4.「保証取引」という取引類型も登記が認められている。
  保証委託取引と保証取引とは、取引の類型を全く異にするものであるところ、
 根抵当権者の根抵当債務者に対する保証債権は、根抵当権者と債務者との間の
 保証契約により生じた債権であり、両者の間の保証委託取引により生じた債権
 であるとは言えないから、「保証委託取引により生じた債権」を被担保債権と
 する本件根抵当権の被担保債権の範囲に含まれるとは言えない。

5.「信用金庫取引による債権」として設定された根抵当権の被担保債権には、
 信用金庫の第三者に対する債権を根抵当債務者が保証したことによる保証債権
 が含まれる(最判H5.1.19)

6.「信用金庫取引」という用語は、信用金庫の業務に着目した取引類型の呼称
  「保証委託取引」という用語は、信用保証協会の業務に着目した取引類型の
  呼称ではなく、取引の客観的形態に着目した取引類型の呼称である。

7.なお、信用保証協会としては、保証債権を根抵当権の被担保債権に含ませた
 いのであれば、「保証委託取引」と並んで「保証取引」を根抵当権の被担保
 債権の範囲に加え、これを登記すれば足りる。