1 以上のような家事労働の定義づけの難しさ、その評価の困難さを背景と
すれば、昭和49年最高裁判例が、「家事労働に専念する妻は、平均的労働
不能年齢に達するまで、女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の
収益を挙げるものと推定するのが適当である」として、賃金センサスに
おける平均賃金を用いるとした結論は、一つの「落ち着き処」として、
やむを得ないのではないか。
2 このような社会情勢の変化を背景として、未就労の女子年少者の逸失利益
の算定については、実務では、将来の賃金や就労可能性における男女間格差
が解消されるか減少することを前提に、全労働者平均を用いるという扱い
で統一化されつつある。
3 2007年の三庁座談会においても、東京・大阪・名古屋の3庁では年少女子
の逸失利益については、基本的には全労働者平均賃金を用いて生活費控除
率を45%としていると指摘されている。
4 男性家事従事者の逸失利益についても、現在は、一般的に女子が家事を
行うことを前提に、女性平均賃金を用いてこれを算定しているが、この前提
が当然のものといい切れるであろうか?