同時履行(請負代金と損害賠償)

1.前提
工事完成工事が予定された最後の工程まで一応終了したかどうかで区別する見解(予定工程終了説)

2. 注文者は瑕疵修補に代わる損害賠償債権を有することをもって報酬債権全額の支払を拒めるのか、それとも対当額についてのみ同時履行の関係にあるのか。

最平9.2.14は、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。

3. 相殺後の報酬残債務について、原則として、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うことになる(最平9.7.15)

4. 建物新築工事の注文者が瑕疵修補に代わる損害賠償債権をもって請負代金債権との同時履行を主張することは信義則に反するとされた工事完成事例(判タ1358-130)