安全配慮義務違反と弁護士費用

1. 労働者が、使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害というべきである。(判タ1368-63、最判平24.2.24判決)


2. 本判決は、労働者が、使用者に対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合、その主張立証すべき事実が不法行為に基づく損害賠償請求の場合とほとんど変わらず、弁護士に委任しなければ十分な訴訟活動をすることが困難な「類型」に属する請求権であることを根拠に、弁護士費用の請求を肯定した。


3. 当該事案において不法行為も併せて成立するか否かを問題とするものではなく、使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求の場合には、「類型的」に弁護士費用の請求を認めるという考え方に立っていることがうかがわれる。


4.労働契約以外の法律関係において安全配慮義務違反の債務不履行があった場合にも、その射程は及ぶものと思われる。他方、安全配慮義務違反以外の債務不履行が問題となっている場面については、その射程は及ばないものと思われる。