法定地上権の成立の基準時の抵当権

1.抵当権
   法定地上権の成否に関して「設定時ではなく競売を実行する時点に
  おいて、最先順位のものを基準に法定地上権の成否を判断する。

2.判旨(最判H19.7.6)
   土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定され
  た後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の
  実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、
  当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していな
  かったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたとき
  は、法定地上権が成立するというべきである。

3.事案
  (1) S44.5.19 土地Y 建物A
  (2) S44.5.19 土地・建物にBが1番抵当権
  (3) S53.9.26 A死亡 Yらが相続
  (4) H4.10.12 土地についてCが2番抵当権
  (5) H4.10.30 1番抵当権解除・抹消
  (6) 2番抵当権実行 H16.7.2 X競売による所有権
  (7) X、Yを法定地上権不成立を理由に建物収去・土地明渡

4.理由
   甲抵当権が被担保債権の弁済、設定契約の解除等により消滅するこ
  ともあることは抵当権の性質上当然のことであるから、乙抵当権者と
  しては、そのことを予測した上、その場合における順位上昇の利益と
  法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであ
  ったというべき。

5.要件 4要件のうち②
   ② 抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属すること

6.その他
   本件は、本件2番抵当権の設定当時、本件土地がYの所有であり、
  本件建物がYらの共有であったが、建物共有者の1人が土地を単独
  所有している場合であっても法定地上権が成立するとされている。
  (最判S46.12.21)

7.反対説(原審)
   ① 法定地上権の負担のない土地としての担保余力を把握していた
    後順位抵当権者の利益を不当に害することになる
   ② 建物所有者としても、もともと先順位抵当権を基準にすれば、
    法定地上権の成立は認められなかった