1.破産債権者は、破産者に対する債務がその破産宣告の時において期限付
又は停止条件付である場合には、特段の事情のない限り、期限の利益又は
停止条件不成就の利益を放棄したときだけでなく、破産宣告後に期限が
到来し又は停止条件が成就したときにも、その債務に対応する債権を受動
債権とし、破産債権を自動債権として相殺することができる。
2.
① 消極説
破産宣告時に破産債権との相殺敵状を生じる結果、許容されるもので
あって、破産宣告後に期限が到来し又は停止条件が成就した場合には、
破産宣告後に債務を負担したものとして、同法104条1号による相殺は
許されない。
② 積極説
破産債権者の破産宣告時における相殺の担保的機能に対する合理的
期待を保護しようとするものであるから、合理的期待が認められない
場合には、旧破産法99条後段は適用されず、同法104条1号によって相殺
が禁止されるとしている。
3.本判決にいう「特段の事情」としては、相殺権の行使が相殺権の濫用に
当たる場合などが考えられ、相殺権の濫用に当たる場合には相殺権の行使
が許されないとすることによって、破産債権者の相殺の担保的機能に対する
期待が合理的でないと考えられるような例外的な場合についての調整を
図ったものと考えられる。