◇ 賃借人が賃貸借契約の期間途中に契約を解約した場合についての違約金
 条項、原状回復費用の請求権(東京地平成20.8.18金法1855)

1.本件違約金条項の趣旨、違約金の額等を勘案の上、この条項の効力を
 認め、破産管財人が破産法53条1項に基づいて解除する場合にもこれに
 拘束される

2.本判決
  原状回復費用の請求権の財団債権性を認めた。管財人が解除した場合の
 原状回復費用の請求権については、多くの見解は財団債権とするが、これに
 対して、財団債権は本来は破産債権者全体の利益となる費用等であるが
 原状回復費用にはそのような性質を認めることは困難との観点からこれを
 疑問視する見解があり、破産手続開始前の毀損や設備設置行為に起因する
 費用の請求権であることも指摘して破産債権と解する見解もある。

3.保証金2億円は、賃料の約9ヶ月半分に相当するところ、賃貸人及び賃借人は、
 本件賃貸借契約を10年間継続し、賃貸人は賃料収入を得ることを期待して
 いたことに照らせば、その金額が、違約金(損害賠償額の予約)として過大
 であるとはいえない。

4.原状回復義務を履行しないまま本件建物を明け渡したのであるから、
 このような場合、原告は、本件建物を明け渡した時点で、原状回復義務の
 履行に代えて、賃貸人に対し原状回復費用債務を負担したものと解する
 のが相当である。その結果、賃貸人である被告が原告に対して取得した
 原状回復費用請求権は、原告が破産管財人として、破産手続の遂行過程で、
 破産財団の利益を考慮した上で行った行為の結果生じた債権といえるから、
 破産法148条1項4号及び8号の適用又は類推適用により、財団債権と認めら
 れる。