金法1860号特集

一、東京地裁(自由財産の範囲の拡張)
  99万円を超える拡張が行われる事例は年間十数件程度であり、退職金支給
 見込額が高額に上る、あるいは多額の解約返戻金が受けられる保険契約
 を有しているが破産者が病気のため解約するのが適当でないといった
 事案で、破産者の収入・支出の状況からすると自由財産から当該資産
 相当額を拠出するのがきわめて困難であるとの事情から拡張を求める
 といったケースが多く見受けられる。

二、
 1 大阪地裁(優先的破産債権の処理)
  配当によることなく優先的破産債権を弁済し、当該事件を異時廃止
 によって終了させることとして、迅速かつ効率的な手続手段を図っている。
 (ア)公租公課について全額を弁済するに満たない場合
    税金等の請求権に対し、法定された順位に従った弁済をする旨の
   和解許可申請をしてもらい、同許可に基づいて弁済を行った上で、
   異時廃止決定を行っている。
 (イ)公租公課は全額弁済できるが、労働債権について全額を弁済
   するに満たない場合
    労働者保護および簡易迅速処理の観点から、労働債権に対する
   弁済許可制度(法101条1項)を利用することで、事実上の按分弁済
   を行った上で、異時廃止決定を行っている。

 2 当部では、解雇予告手当は、労働法上定められた特別の給付であり、
  労働の対価ではないと解されることから、「給料」(法149条1項)
  に該当しないため財団債権には含まれず、「雇用関係に基づき生じた
  債権」(民法308条)として優先的破産債権にとどまるとの見解をとって
  いる。