財団放棄後の不動産と管理費と免責

1.買受人が、区分所有建物が破産財団から放棄された後、買受人がこれを取得するまでに発生した管理費等について破産者に対する求償が認められた事例(判時2135-56)(東京判23.11.16)(上告審)(一審町田簡裁)


2.原審は、求償に係る管理費等を、その発生時期により
(1)破産手続開始決定日までに発生したもの
(2)同日から本件区分所有建物が破産財団から放棄されるまでに発生したもの
(3)放棄後、被上告人が本件区分所有建物を取得するまでに発生したもの
に区分けし、そのうち

(1)の管理費等については、破産債権であり(破産法2条5項)、上告人について免責許可決定が確定しているから、上告人はその責任を免れ(破産法253条1項本文)、被上告人の弁済によって上告人が利得を得るものではない

(2)の管理費等については、「破産財団の管理」に関する費用(破産法148条1項2号)に該当する財団債権であり、破産者である上告人は責任を負わないとして、いずれも被上告人の上告人に対する求償権は認められないとした。


3.(3)の管理費等については、上告人は本件区分所有建物の所有者として支払義務を負い、同建物の特定承継人(建物区分所有法8条)として当該管理費等の弁済をした被上告人は上告人に求償できる


4.上告人は、破産法1条の趣旨から、信義則又は権利濫用の法理により破産者が義務を負わないものとすべきであると主張するが、区分建物が破産財団から放棄された場合、破産者は当該区分建物を自由に使用収益処分する地位を与えられることにかんがみれば、一律に権利濫用等の法理を適用することは相当ということができない。(判旨)