1 証拠契約とは,広義では,判決の基礎となる事実の確定方法に関する当事者間の
合意を指し,狭義では,証拠方法の提出に関する合意を指す。
2 自白契約,証明責任を変更する合意,事実の確定を第三者の判断に委ねる仲裁
鑑定契約などは,前者の例であり,証拠制限契約は後者の例である。
3 証拠制限契約に関しては,裁判所の自由心証を侵害するとの批判が考えられる
が,いかなる証拠方法を提出するかは,本来当事者の判断に委ねられ,また,か
りに契約締結などの事実に関して,証拠方法を書証に限るとの合意がなされ,そ
の効力が認められたとしても,提出された文書を評価して当該事実について確信
を形成するかどうかは裁判所の判断に委ねられるものであるから,これが自由心
証主義に違背するものとはいえない。
4 証拠制限契約に反する証拠方法の申出は,証拠能力に欠けるものとして却下さ
れる。